財務管理の概要に続いて、もう少し具体的に財務管理を見ていきましょう。
財務管理に関する活動にはサイクルがあります。また、財務管理とは「お金」に関する活動全般のことだと説明しましたが、これは仕入れて売るといったお金の流れだけではなく、他にも様々なお金の流れがあるということです。
そうしたことをここではお話しします。
財務活動のサイクル
「財務管理とは」でもふれましたが、どんな企業でも、その活動の流れを「お金」の視点でみると、
①お金を集める
↓
②お金を使う
↓
③稼ぐ
というサイクルは同じになります。
それぞれについて、説明します。
お金を集める
まずはお金を集めますが、これを資金調達と呼びます。
例外はありますが、普通は元手となるお金がないと何もできません。
これから会社を立ち上げるのであれば、法人設立にお金が必要です。飲食業のお店を開くのであれば、店舗や内外装、売る商品の仕入れなどが必要です。
それらに必要なお金を集めるというわけです。
したがって、集める前にまずその事業にどのくらいのお金が必要なのか計算する(計画する)ことが大切です。何も考えず行き当たりばったりだと、一体いくらお金が必要か分かりませんよね。
ちなみに資金を集めるには、株式や社債、銀行からの融資などいろいろありますが、考え方としては3つしかありません。
その3つとは「もらう」「借りる」「稼ぐ」です。
①もらう(出資を受ける)
株式会社であれば株式出資です。個人事業主であれば元入金となります。このお金は、企業に提供されたものですので、借金ではありません。返す必要がないお金となります。ただし株主には会社の利益に応じて配当という形で還元することになります。
②借りる
これは、個人や金融機関から借りることです。借りたわけですから、このお金はいつかは返さなければいけません。また通常は借りたお金に「利息」を付けて返すことになります。
③稼ぐ
これは自分の会社で稼いだお金です。稼いだお金のことを資金調達と言うのは、違和感があるかもしれません。しかし、大切な資金調達の手段の一つです。また「①もらう」と「②借りる」は他者の協力があって初めて実現しますが、この稼ぐだけは自力でコントロールできるものとなります。
お金を使う
必要な資金を調達したら、次は営業活動に向けてお金を使います。これを資金投下と呼びます。
例えば飲食業を開業するのであれば、店舗を準備しないといけません。看板を出したり、調理器具を揃えたりしないと、お客さんに来てもらうことができません。
それから当然販売する商品の材料(食材や包装資材など)も仕入れる必要があります。人が足りないのであれば社員やパートを募集することもあるでしょう。
そういったことに資金を使い、次の営業活動ができるということになります。
商品・サービスを売る
事業ができる状態になったら、お客さんに商品やサービスを売ります。これを営業活動と言います。
営業活動では利益を出すことを目指しますが、利益とは「収益-費用」でもとめられます。販売によって企業に入ってくるお金が収益、反対に販売するために使ったお金を費用(コスト)と呼びます。
収益>費用であれば利益(黒字)となり、反対に収益<費用であれば損失(赤字)となります。
利益で増えたお金は次の仕入れに使ったり機器の導入にあてたりして、さらなる収益獲得を狙うことになります。
反対に赤字というのはお金が減った、というわけですので、それにより事業活動に支障が出るのであれば(仕入れるお金が足りないなど)、新たな出資を受けたり、借りたりする事が必要になります(普通は借りることが多いでしょう)。
企業活動に関するお金の流れ
次に企業を取り巻くお金の流れをもう少し細かく見ていきます。
上記の通り、企業活動は何かを仕入れて、それに価値を付けて売ることで利益をあげます。よって企業活動のお金の大きな流れは仕入れ→販売ですが、その他にもいろいろな流れがあります。
下図をもとに見ていきましょう。
まず自分が仕入れる側の視点です。
事業を行なっていく上では、自分でできることとできない事があります。
例えば飲食業であれば、食材を調理加工することはできます。しかしお店の看板を作ろうと思ってもできる企業は少ないでしょう。また財務管理に関していえば、どの企業も1年に1回は決算ということを行って決算書を作るのですが、それを自社で作れる企業もあれば、作れない(人が足りない、できる人がいない)企業もあります。
そうした場合は、外部の業者に料金を払って、代わりにお願い(外注)します。
またどんな企業でも通常電気は使うでしょう。飲食業であれば、ガスや水道も使います。そうした公共サービスは料金を払って利用します。このように本業の仕入れ以外にもお金の流れがある事がわかります。
次に金融や税の視点です。
手元のお金が足りなければ銀行などから借り、借りたお金は利息を付けて返します。株主からは出資を受けますが、利益に応じて配当をします。また企業は利益に応じて税金(法人税や住民税)を納める義務があります。
このように金融機関や投資家、税務署との間にもお金の流れがあります。
そして社内の視点です。
当たり前ですが企業には経営者をはじめ、社員やパートの人たちがいます。そうした従業員は会社に労働を提供し、会社はそれに対して報酬や給料、ボーナスを払います。
これも当然企業のお金の流れです。
このように、例えば飲食業という食材を仕入れて調理・加工し、売るという企業を見ても、本業以外のいろいろなところでお金の流れがある事が分かります。
よってこれらを全て管理をしていないと、その企業に今どのくらいお金があるのか、これからどのくらいお金が必要なのか、などが分からないことになります。
これらの管理が財務管理の大きな役割の一つとなります。
ちなみにそうした管理には記録をする事が重要となりますが、その記録の仕方を学ぶのが「簿記」です。
またそれを1年分まとめて決算書を作るということも「簿記」で学びます。
従って「簿記」を学ぶと、企業活動全般のお金の流れを把握できることになります。
まとめ
ここでは財務活動をサイクル、そして本業以外にも目を向けて、どんなお金の流れがあるか見ました。
細かい話もありましたが、どの企業も「活動のサイクルは同じ」で、「仕入れて売ったお金だけの管理では無い」ということを把握してください。