ここではキャッシュ・フロー計算書の説明をしていきます。
キャッシュ・フロー計算書は貸借対照表および損益計算書と並んで主要な決算書であり、この3つの決算書を持って財務3表とも呼ばれます。
内容
全体像
キャッシュ・フロー計算書は一般に次のような書式となります。
キャッシュ・フロー計算書は、その企業の1年間のキャッシュの増減を示したものです。
ここでのキャッシュとは現金だけでなく、普通預金や当座預金、満期日が近い定期預金などすぐに換金できる資金を含んだものとなります。
ちなみにキャッシュ・フローとは「お金の流れ」のことです。
キャッシュ・フロー計算書では、企業活動のどの部分でお金が入って、どの部分で出ていったのか、を計算したものとなります。
よってこれを見ることで、その企業の資金繰りの概況が見えます。
詳細
この書類は次の6つの区分で出来ています。
1.営業CF、2.投資CF、3.財務CF、4.現金増減額、5.現金期首残高、6.現金期末残高
上から順に見ていくと分かりにくいかもしれないので、下から説明します。
4.現金増減額〜6.現金期末残高
一番下の6.現金期末残高は、現時点でのキャッシュの残高です。
その上の5.現金期首残高は、一年前のキャッシュの残高です。
そして4.現金増減額は5.と6.の差額となり、この1年間でどのくらいキャッシュが増えたのか(または減ったのか)をあらわします。
この4.の増減の内訳が1.〜3.ということになります。
3.財務CF
ここでは財務活動によるキャッシュ・フローを示します。
財務活動とは、借り入れや株式、社債などによる資金の調達や、反対に借り入れの返済や社債の償還などとなります。
借り入れをすると手元のお金が(借金ですが)増えますので、キャッシュ・フローはプラスとなります。
反対に借り入れを返済すると手元のお金が(借金とともに)減りますので、キャッシュ・フローはマイナスとなります。
2.投資CF
ここでは投資活動によるキャッシュ・フローを示します。
投資活動とは、機械設備や土地・建物などの固定資産や有価証券などを取得する、または売却したことによるものとなります。
例えば機械設備を売却すると手元のお金が増えますので、キャッシュ・フローはプラスとなります。
反対に機械設備を取得すると、手元のお金が減りますので、キャッシュ・フローはマイナスとなります。
1.営業CF
ここでは営業活動によるキャッシュ・フローを示します。
営業活動とは、その企業の本業ということです。
例えばお弁当屋であれば、弁当を売った事によるキャッシュ・フローという事になります。
ただしこの営業CFの中身はやや分かりにくいかもしれません。
まず表示方法は直接法と間接法という2つがあります。どちらで表示されていても、最終的なキャッシュ・フローは同じ額になります。
ただ実務上は間接法が多い(私も実務で見るのは間接法で作られたものがほとんどです)とされていますので、ここでも間接法による表示について説明します。
間接法での計算では税引前当期純利益を元に計算していきます。
税引前当期純利益に対して、減価償却費を足したり、売上債権や買入債務によるキャッシュ増減を計算していきます。
細部まで説明すると煩雑で分からないと思いますので、主要な部分だけ記載の意味をざっくりお伝えします。
減価償却費を足すとは?
減価償却費とは、固定資産を取得した費用を一度に費用計上せず、使った期間に応じて費用計上するものです。
例えば材料であれば、その期間に使った分が費用として認識できます。
しかし機械や車両、建物などは長期間に渡って継続して使用し、古くなることはあっても減るということはありません。
これらは収益を上げるために取得したので、購入費は費用と考えますが、数年に渡って使えるので、購入時点で全部費用としてしまうのは損益を計算する上で適切でないと考えられます。(厳密には法令により一括で計上できる場合もあります)
そのため会計では、その固定資産が使用できる期間(耐用年数といいます)で按分して費用計上します。損益計算書では、販売費及び一般管理費の中で計上することが多いです。
しかし費用計上はしても、実際のお金の動きはありません(あくまで損益を計算するための費用なので)。
よって減価償却費として計上した金額を足し戻すということをしています。
売上債権や棚卸資産が増えると現金は減る方向に
売上債権とは売掛金や受取手形など、売ったけど現金の回収が済んでいないお金のことです。
また棚卸資産とは、簡単に言えば在庫のことです。将来売るために持っている商品や材料などとなります。
これらが増えた場合は、現預金は反対に減る事になる(現金以外の部分が増えたので)ので、増えた分がマイナスとして計上されます。
買入債務が増えると現金は増える方向に
買入債務とは買掛金や支払手形など、買ったけど現金の支払いが済んでいないお金のことです。
これが前年より増えた場合は、手元に残っている現預金が増えた事になりますので、増えた分がプラスとして計上されます。
反対に減った場合は、その分お金が出て行って現預金が減った事になるので、減った分がマイナスとして計上されます。
読み方
このキャッシュ・フロー計算書ですが、その企業のお金の流れを見る重要な資料となります。
もちろんキャッシュが増えたほうが良いのですが、私の場合1.〜3.のプラスとマイナスのパターンにより次のように見ています。
1.〜3.のプラスとマイナスのパターンは?
1.〜3.のキャッシュ・フローについて、もちろん細かい解析は必要ですが、大雑把にいうと次のように捉えることができます。
1.営業CF …本業でのキャッシュの増減
2.投資CF …設備への投資や売却による増減
3.財務CF …銀行との貸し借りによる増減
したがって、まず1.がプラスであることがとても大事です。
例えば、1.プラス、2.マイナス、3.マイナスというパターンだった場合、本業で増やしたお金を投資に使い、さらに借り入れの返済にも回している、と読めるので健全な企業だと見ることができます。
反対に、1.マイナス、2.プラス、3.プラスというパターンだった場合は、本業が儲からずお金が減ったので、固定資産などを売却、それでも足らず銀行からお金を借りて事業を回している、と読めるので、不健全な企業と見ることができます。
このように、単純に増えたかどうかではなく、1.〜3.がどのようなプラスマイナスとなっているかに着目することが大切だと考えます。
まとめ
ここではキャッシュ・フロー計算書について、説明しました。
資金繰りの観点の決算書となるので、とても大切な決算書だと考えています。
しかしこの決算書は、やや独特な書式となるため、始めは分かりにくいと感じるかもしれません。
読み方に書いたように、1.〜3.のキャッシュ・フローの意味とそのパターンに着目して読むようにすることで、理解を深めていきましょう。