ここでは、銀行融資の際の金利について、その構造や考え方を説明します。
そもそも金利とはなにか?
まず金利の前に、利息についておさらいです。
利息とは
「借りたお金に加えて支払うもの」
です。
似た言葉に利子がありますが、じつはこのふたつの言葉は、本質的な意味は同じです。
慣習として貸したときに受け取るものを利息、借りたときに支払うものを利子、とすることもありますが意味は同じです。
この利息の割合(%)が金利です。
(銀行で表示されている金利は、通常は年利率です)
ちなみに利息は、借入期間を加えてつぎのように計算します。
利息=借入残高×金利×借入期間
例えば、1000万円を金利2%で1年借りたら
利息は20万円
です。
しかし運転資金や設備資金は、ふつう1年以上借りて、毎月分割で返済します。
その場合、同じ1000万円借りても、借入期間が長ければ、利息総額も多くなります。
例えば上と同じ1000万円を金利2%で借りた時、借入期間を7年(84回払い)とすると、
利息の総額は70万円超
になります。
つまり、金利が同じでも払う利息総額は借入期間により変わります。
金利はどうやって決められる?
金利は、銀行のビジネス構造上、つぎのように決定されます。
金利=
①資金調達コスト+②行内コスト+③貸し倒れリスク+④利益
①資金調達コストは、
融資するお金を集めるためのコストです。
銀行が融資をするお金のモトは、基本的にわれわれ預金者から預かったお金です。
よって調達コストとは、預金者に対して銀行が払う利息です。
当然、預かったお金に払う金利より、融資したお金で受け取る金利が大きくないと商売になりません。
そのため、預金利息より借入利息の方が金利は高くなる傾向にあります。
②行内コストは、
銀行内部の経費です。
つまり銀行の人件費や、店舗運営にかかる諸経費です。
③貸し倒れリスクは、
貸したお金が戻らないかもしれないリスク、
つまり貸出先の倒産リスクです。
あなたの会社でも取引先がいくつもあると思いますが、販売した先が倒産したら売ったお金が回収できないことがあり得ます。
いわゆる貸し倒れです。
銀行では、融資する企業の決算書を分析し、この貸し倒れになる可能性を算定しています。
これを一般に「格付け」といいます。
格付けが高ければ倒産リスクは低いとみなされて金利は低くなり、格付けが低ければ倒産リスクが高いとみなされて金利は高くなります。
④利益は、
銀行の儲けです。
銀行も企業である以上、利益を生み出さないと継続できません。
この①〜④の要素を見た場合、
①、②、④は企業側ではコントロールできない
ことが分かります。
よって、企業努力によって金利を下げるには、
貸し倒れリスクを下げる ⇒ 格付けを上げる
ことがキモになることが分かると思います。
格付けはどのように算定するのか
格付けは、「定量要因」+「定性要因」によって算定されます。
「定量要因」とは数字面の評価であり、企業の決算書の数字をもとにスコア(点数)をつけます。
一方、「定性要因」とは数字面以外の要素でのスコアです。
要素には「市場動向」や「景気感応度」「市場規模」などあります。
この二つの要因をあわせて合計200点でスコアを出します。
配点は「定量要因」が129点、「定性要因」が71点で、「定量要因」の方がウエイトは大きいです。
(つまり決算書の内容を重視している)
そして「定量要因」+「定性要因」の結果10段階で格付けされます。
このなかで銀行の融資の対象となるのは、
格付け1(リスクなし)〜7(リスク高く管理徹底)
くらいまでです。
なおスコアリングの仕組み上、「定量要因」で格付け1と2は大企業しかとれません。
したがって、中小企業の格付けは3〜7の範囲となり、
格付け3であれば優良企業
といえます。
「定量要因」の方がウエイトは大きいことと、「定性要因」はスコア化が分かりづらい面があるので、ここでは「定量要因」を簡単に説明します。
定量要因は大きく4つのカテゴリで構成されていて、それぞれの配点は次のとおりです。
①安全性(34点)
②収益性(15点)
③成長性(25点)
④返済能力(55点) …合計129点
それぞれのカテゴリを簡単に説明すると、
①安全性というのは、
簡単にいうと企業の「倒産のしにくさ」です。
具体的には、自己資本の割合や借入金と自己資本の比率などが評価されます。
自己資本が大きければ必然的にこのスコアは高くなり、反対に自己資本が小さい(借入が多い)場合はスコアが低くなります。
②収益性は、
企業の「稼ぐ力があるか」を示します。
これは利益率がどのくらいか、がポイントです。
毎期しっかり利益を出していればスコアは高く、利益率が低かったり赤字になったりすると低くなります。
③成長性は、
自己資本額や売上の大きさが評価されます。
詳細は割愛しますが、中小企業だとスコアが出にくい部分です。
④返済能力は、
「返済する力があるか」というものです。
具体的には、借入金は利益を原資として何年で返せるか、利息の支払い能力はあるか、が評価されます。
カテゴリの配点を見ると、④返済能力が圧倒的に高いことが分かります。
そしてその次が①安全性です。
企業ではどれだけ売れたか、どれだけ利益が残ったか、に視点がいきがちです。
しかし貸す方の銀行側では、ちゃんと返済できるか(できそうか)、自己資本は充実しているのか、という視点だということです。
この視点の違いを正しく認識することが、銀行と取引する上ではとても重要です。
なお、格付けの詳細やそれに加えておこなう評価は、オープンにされていません。
また銀行ごとでも異なります。
しかし、基本的な考え方は上のようになります。
また、そのほかにも次のような傾向があります。
短期<長期
短期だとリクスは低いが、長期だと想定外の事象もあるのでリスクは高いとみなされます。
都市銀行<地方銀行<信用金庫・組合
銀行は区分けが異なっても扱うお金は同じです。しかし、規模が大きな都市銀行は効率化が図りやすく金利は低い傾向にあり、規模の小さい信用金庫・組合は比較的高めとなります。
担保あり<担保なし
担保は返済が困難になった場合に、代わりに支払いに充てられるものです。不動産担保であれば、その土地や建物を売ったお金が充当されます。当然、担保がある方がリスクは低いことになり、金利も低くなります。
格付け高<格付け低
上でも書きましたが、格付けが高ければリスクが低いとみなされ、金利は低くなります。
まとめ
ここでは、資金調達時には避けてとおれない金利について説明しました。
なお、最近では決算書の評価に加えて、「事業性評価」というものが行われてきています。
決算書がその企業の過去の信用を担保することに対して、「事業性評価」はその企業の未来の期待への評価です。
これからは過去がどうだったかや、担保の有無だけでなく、将来性も積極的に評価しようというものです。
しかしそうした流れがあっても、決算書の評価がなくなるわけではありません。
銀行の決算書評価の視点も、しっかり覚えておきましょう。